〜reverse〜


俺はその日、久しぶりに家に帰った。
・・・というのも、寮の一部改装があるからだ。
俺は学校帰りに寄ったケーキ屋で買ったパンプキンタルトの箱を開け、皿に移す。
バニラエッセンスの甘い香りに自然と笑みが漏れてくる。
フォークを口にくわえ、リビングに向かう。
椅子に座り、タルトを一口食べる。
程よい甘さが口に広がる。
この顔で甘い物好きって言うとみんな驚く。
そんなことをしているうちに、がちゃっと玄関の扉が開く音がする。
足音がして、兄貴が顔を覗かせた。
「あれ、裕太?」
ぎくっ!
「あ、兄貴・・・」
振り向く。
「あ、今日からだっけ?寮の改装」
俺はかちゃっと皿にフォークを置く。
「あぁ」
兄貴は俺の前に座ると、
「ケーキ?」
そう言った。
俺は今更隠すことも出来ず、
「わ、悪いかよ」
横を向いた。
「やっぱり、甘い物が好きなんだね」
俺は俯く。
「やっぱ、僕たちって正反対だね」
reverse
リバース。
「・・・」
「でもさ、たまにはそれ食べたいな」
俺はため息をつき、タルトを半分に切った。
「ほら」
そういうと自分の分のタルトをもくもくと食べ始める。
兄貴はその様子を見てくすっと笑う。
「そんなにいらないよ」
兄貴はタルトの刺さったフォークを持つ俺の腕を掴むとぱくっとタルトを食べた。
「なっ・・・!!」
口をパクパク。
心臓がドキドキする。
つーか、どーしてドキドキするんだよッ!!
俺はがたんと立ち上がるとその場から立ち去る。
しかし、俺の手にはしっかりフォークが握られている。
こ、こんなのって、まるで・・・
恋?!
俺が兄貴に恋なんて!!
ありえねーッ!!

はぁ・・・。
ため息。
「裕太君?」
わぁ!!
観月さんのドアップに俺は腰を抜かしそうになった。
「失礼ですね、人の顔を見てその反応は・・・」
「そんなつもりじゃ・・・」
観月さんが隣に座る。
「ま、いいでしょ、ところで何かあったんですか?」
「え?」
「ため息ついて・・・」
俺は再びため息をつき、
「あの、別に好きじゃないんですけど、ドキドキして気になるんです・・・なんていうのかな、
とにかく、気がつくとそいつのことばっかり考えてるんです、それって恋とかじゃないですよね・・・?」
って何言ってんだ俺・・・。
観月さんはくすっと笑うと、
「立派な恋ですよ」
・・・間。
こ、こ、こ、恋!!
「そんな、今までなんとも思ってないし、突然・・・」
「恋なんてそんなものでしょ、昨日まではなんとも思ってなくても突然気づくこともあるんです」
嘘だ・・・。
だって、実の兄貴だぞ!!
兄貴だって他に好きな人が・・・。
・・・ん?!
兄貴の好きな人ってどんな人だ?!
き、気になる・・・かも(注 猫湖さんではありません)
「裕太君・・・?」
観月さんが俺の顔を覗く。
俺はがばっと立ち上がる。
さすがの観月さんも唖然と俺を見上げる。
関係ねーじゃん!!
あいつが誰と付き合おうと!!

・・・。
って何で俺は青学にいるんだーッ!!
か、帰ろう!!
「君は・・・」
びくっ!!
その声は・・・。
「不二の・・・」
手塚部長・・・。
俺はなぜか逃げの体勢をとった。
「あ・・・!!」
ごーん!!
額に痛みと衝撃を感じ、俺はその場に倒れた。
「危ないって言おうと思ったんだが・・・」
俺の意識は遠のいていった。

「・・・た・・・裕太!!」
はっと目を覚ますと白い天井と兄貴の顔が視界に入ってくる。
「周助・・・?」
兄貴は安堵のため息をつくと、
「手塚が言ってたよ、校門の門柱に激突したんだって?」
俺は急に恥ずかしくなり、兄貴に背を向けた。
「それより、どうして来たの?」
言えるわけがない、兄貴のことが知りたくてなんて・・・。
「裕太?」
「安心しろよ、スパイとかじゃねーから」
「え?」
俺は起きるとベットから下りる。
「裕太・・・」
「先に帰ってる」
ベットの隣の荷物入れから鞄を出すと立ち去ろうとした。
しかし、ふと立ち止まる。
「手塚さんに・・・お礼言っておいてくれねー?」
兄貴はため息をつくと、
「はいはい」
と言った。

帰り道の途中、俺は煎餅屋を見つけなんとなく立ち寄る。
そして唐辛子たっぷりの煎餅の袋を手に取るとそのまま買った。
特に意味も無く買ってみた。
なんとなく、コレで兄貴のことが少しでもわかるような気がしたからだ・・・。
家に帰ると、リビングにいき、煎餅の袋の封を切る。
一枚取り出し、ぱりっと食べる。
とてつもない辛さが突き抜けた。
「・・・!!」
あわててキッチンに行き、水を飲む。
しかし、舌がピリピリしている。
すると、玄関の扉が開く音がする。
俺はあわてて背中に煎餅の袋を隠す。
兄貴がリビングに入ってくる。
「裕太?」
あまりの辛さに口がきけなくない俺は兄貴を見る。
「どうしたの?」
ぶんぶんと首を横に振る。
「ま、いいや、はい」
それは見覚えのあるケーキの箱だった。
これって・・・。
「パンプキンタルトだよ」
俺の手から煎餅の袋が落ちる。
「あ・・・!!」
兄貴がそれを拾う。
「コレって唐辛子煎餅?」
俺は俯き、頷く。
「貰っていいの?」
こくこく。
兄貴はにこっと笑い、
「ありがとう」
と言った。
俺はかぁっと赤くなったのが自分でもわかった。
「やっぱ、俺たちって・・・」
reverse
リバース。
「だねぇ」
「だな」
俺はため息をつき、兄貴の手からパンプキンタルトの箱を受け取る。
「裕太、そういえば、どうして青学に来たの?」
またそれか・・・、と頭を抱える。
「理由なんてねーよ」
そういい、タルトを皿に移した。
結局、兄貴のことは何ひとつわからない・・・。







美月野 紫良 様〜本当にありがとうございました!めちゃくちゃ嬉しいです。
裕太くんが鼻血が出るほど可愛いです〜vお兄さんに対して素直じゃないとことか、お兄さんのことを知ろうとしている姿にハートを鷲掴みにされた感じです。
もう♪可愛くってど〜しよう、不二テニスパ〜ク♪(そんな場所ナイです)って富○サファリパークのCM風に歌ってしまうぐらい可愛かったです。
イロイロとありがとう〜お礼をいくら言っても良い足りないほどです。

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